【闇金裏物語(金原 猛)|闇金関連文献リスト】

元幹部が伝える生々しい闇金の姿

読者に代わって闇金関係の書籍を読み、要約を紹介しています。

 

皆さんの情報収集にお役立てください。

 

今回は「闇金裏物語」(金原猛 著 バジリコ株式会社 刊)です。

 

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本と著者

金原氏は、高校中退後に10代で闇金の世界に入り、某闇金グループの統括にまで上り詰め、引退した人物です。

 

「闇金裏物語」は2000年代初頭の闇金の暴力性に満ちた世界を赤裸々に伝えている自叙伝です。

 

本の内容

 

第1章 客のサル知恵、業者のワル知恵

 

世間のイメージと現実のギャップ

闇金に対する世間のイメージは間違いだらけだという。

 

無登録の悪徳金融というイメージがあるが、実は登録は簡単にできるため、多くは登録業者だ。

 

利息もトイチではなく、基本はトゴだ。

 

苛烈な追い込みで食いついたら離さないというのもウソで、回収が無理だと思ったらさっさと諦め、そのために利率を高くしている。

 

非常に儲かるというのも実はもう終わっていて、闇金の全盛期は2003年頃で終わっている。

 

悪名が轟きすぎたために客が知恵をつけて、警察の取り締まりも厳しくなったためだ。

 

一匹狼のアウトローというのも違って、グループでやって信用情報を蓄積・共有するからうまくいく。

 

ただし、正規の貸金業者からは1銭も借りられない人間が相手なので、貸金業者協会の信用情報機関が持つような情報ではない。

 

ブラック前提だが、まったく返す当てがない相手は識別する必要があるということ。

 

闇金の組織

末端の店舗は3〜8人程度で、店長とヒラ。

 

店舗数が5軒以上になると3〜4店舗を管理する「統括」を置く。

 

社長や統括の仕事は、時々横領がないかチェックしたり、業績でハッパをかけること。

 

闇金の与信審査

最初に何処からいくら借りているか、できるだけ書かせる。

 

すべての客が嘘つきだが、「まだほかにもあるでしょ?」と粘り強く書かせる。

 

グループ外の業者がどれくらいあるか確認し、グループ内の業者には返済状況を電話確認する。

 

単独業者ではこういうことはできない。

 

天引きシステムとジャンプのしくみ

利息は貸し出し時点で徴収するので、実際に渡すのは貸出額の半分。

 

元金の返済を猶予して利息の返済だけさせるのがジャンプ。

 

ジャンプは利益を自動的に発生させる仕組みだが、ジャンプする客というのはいつ飛ぶかわからない危険性も秘めている。

 

借用書はそのままに利息の受取りだけを繰り返すのが普通だが、金原氏が所属していた業者では毎回借用書を新たに作り直していた。

 

警察に駆け込まれた時に少しでも有利になるように、「まだ一度も返してもらっていない」証拠を作るため。

 

書類代または審査代

4万貸す場合、トゴの利息2万が天引きだが、さらに2000円前後の事務手数料を取る。

 

基準は決まっていなくて、間抜けな客、嫌いな客からは多めに取る。

 

このお金は店長管理下のお小遣い箱に入れ、昼飯代・おやつ代がここから出る。

 

多様な客

印象に残った客について数名書いている。

 

借り入れの10日後ぐらいに本当に認知症がひどくなって、借りたのを忘れた老人。

 

完済に来る途中で恐喝にあって現金を全額失い、店でまた借りた男。

 

職についたことがなく、政治家の母親の小遣いで返済するマザコン男。

 

50代のおばさんは、天引きや回収に喚き散らして抵抗するのでやっかい。

 

公務員は上客で、特に自衛官は世間知らずで素直。

 

サラ金のブラックリストにも載っていないのにいきなり闇金に来る人もいて、そういう人は返済に詰まったらサラ金で借りて返済させられる。

 

制服の警察官が借りに来たことがある。

 

踏み倒すつもりで嘘の情報を出して借りる男に被害にあったが、その男がグループ企業に借りに来たのを取り押さえた話。

 

その男には他の闇金に15万円くらい借り集めさせて落とし前をつけさせた。

 

闇金社員の実像

平均年齢24〜5歳。社長も30代前半で、30代後半以上の人は業界にはほとんどいない。

 

前職はさまざまだが、ホストが一番多い。闇金をやめてホストになる者もまた多い。

 

募集は大手アルバイト雑誌やスポーツ新聞を堂々と使い、面接時点で「違法業者だがヤクザではない」とカミングアウトする。

 

(闇金にはヤクザ直営店もあるが、金原氏が働いていた会社は違った。)

 

その時点で半分が辞退するが、残れば採用だ。

 

新人の給料は手取りで20万円くらいで、ダイレクトメールのシール貼から始まる。

 

3カ月くらいで25〜30万円くらいに上がり、回収も含めて仕事を一通り覚える。

 

店長になると固定給は50万円くらいだが、歩合(店の売上の3割)と、店を通さない貸付・名簿売却などの副収入があり、合計は多い時で月に800万円以上になる。

 

統括は固定給が200万円くらいで副収入が店長並みなので、月収500〜700万円程度。

 

上の方が収入が少ないが、店長は逮捕リスクが大きく、仕事量も多いので、これでバランスが取れている。

 

店長以上は大変な高収入だが、金は残らない。

 

これは社長が社員の独立を防ぐため、高級車を買わせたり、あの手この手で散財させるからである。

 

第2章 仁義なき回収

2003年頃までの闇金の回収の話。

 

それ以降は貸付も回収も銀行振込、焦げ付いても追わない、というように変わってきたので、こうした話はない。

 

死者に貸した金の回収

相手が死んだ場合は遺族を追い込むことはせず、回収を諦めるルールになっていた。

 

死因で一番多いのは借金苦による自殺。

 

しかし、奥さんと口裏を合わせて死んだことにしていても、あとで生存が発覚して取り立てたこともある。

 

暴力的回収

別の闇金に勤める友人の回収に付き合ったことがあるが、返済遅延者の家のドアを激しく叩き、ボコボコに殴って金を取り立てるものだった。

 

実はこういう闇金の方が多いのかもしれない。

 

警察を呼ばれた場合の対応

今は取締りが厳しくなったことと、客の分布範囲が広がったこと(振込のみの取引なので)により、相手の家に行ったりしない。

 

昔は、夜中でも取り立てに行き、警察を呼ばれることもあった。

 

その場合は警官に事情を話すと民事不介入の原則に従い、「借りたものは返さないとダメ。顔ぐらいは見せてあげたら。」と協力してくれたもの。

 

相手が暴力に訴えた場合

普段穏やかな相手が泥酔し、包丁を持って商店街の中を追いかけてきたことがある。

 

警察が逮捕するに任せ、後で母親から回収した。

 

貸し手の奥さんが精神を病んでいて暴れられたこともある。

 

家財道具を持ち去る理由

家財道具を持ち去る場合もあるが、換金目的ではない。

 

闇金から借りるような人の家財道具は、売れないか、売れても雀の涙。

 

目的はいやがらせで、あと平社員の生活に役立つものがあれば奪っていくこともある。

 

香典を持ち去ったケース

回収に行くと葬式をやっていたが諦めず、香典を全部持って行った男もいる。

 

トバシ携帯を作らせるケース

回収が難しい相手には携帯の名義貸しで許す場合も。

 

電話のみならず、電報を多用する。

 

相手は電話に出なくなるが、電報なら受け取るため。

 

いやがらせと遊びを兼ねて、高額なオプションもつけるため、名義を貸した人間は莫大な請求に遭う。

 

完済への対応

完済したがる客はまだ地力があるとみて、条件を緩めたり、引き延ばしにかかる。

 

ただし、完済を匂わせて翌日飛ぶような人もいるので、地力の見極めは慎重にする。

 

それは給料日と返済日の関係をよく観察すること。

 

親が払う場合

親が子供の尻を拭く場合、それも証拠を確かめもせずに払ってくる場合がある。

 

最高の客なので、その印のついた客に電話営業したりする。

 

客が逆ギレした場合

大型犬をけしかけて対応した客に対し、いったん撤退した後に逆襲。

 

犬を撲殺し、客を拉致して冬の海岸に埋めて暴行、そののち回収。

 

マグロ漁船や臓器売買

これも件数は少ないが実際にあった話で、ブローカーが登場している。

 

ある男は5万の借金を90万に膨らまされ、100万で売られて9カ月の漁船生活。

 

腎臓を斡旋した時の手数料は400〜600万円とのこと。

 

第3章 沈んでいった女たち

 

風俗に落ちた普通の主婦の例

旦那の収入が大きく減ったのに近所の主婦との付き合いがやめられずに借金が膨らんだ主婦。

 

借入総額は100万程度なのにわざわざ闇金に借りに来て地獄の扉を開く。

 

風俗で稼ぐ提案をするとあっさり受け入れ、完済後も付き合いの費用捻出のために続ける様子。

 

体払い

返済できない主婦を、子供がいるので外に連れ出し、公園のトイレで3人のお相手。

 

返済できない女の体を求めることはよくやったらしい。

 

しかし、返済を免除することはなく、取り立てを少し緩める程度。

 

風俗嬢の場合はこうしたことにも抵抗がないので、最初から延滞を狙ったりする。

 

090金融とパチンコ狂の客

金原氏が引退後に携帯一本で商売し、事務所も借用書も使わない090金融が登場した。

 

パチンコ狂は090金融のいいお客さんである。

 

AVへの紹介

AVへの紹介でケリをつけることもある。

 

単体女優の場合は契約金が大きいので、回収は確実、しかも紹介料のキックバックもある。

 

第4章 闇金の戦い

 

ライバル店同士の潰しあい

自分たちへの返済を優先させるために、客の身内のフリをしてライバル店に電話を入れ、踏み倒す場合もある。

 

この時、必ず客にクンロクを入れておく。

 

逆のことをされた場合、相手の連絡先を聞き、「訴えるならどうぞ」と答える。

 

相手が闇金ならこれでたいてい相手が引く。

 

本物の弁護士だった場合はこちらが引くまで。

 

ツケウマとババ抜き

ジャンプ代を他の業者から借りてこさせるのがツケウマだが、自分のグループ内の業者を紹介しないのがルール。

 

しかし、そのルールを破って誰のところで飛ぶか楽しむババ抜きもみんなやっていた。

 

店名かぶりのトラブル

移転に伴い店名が変わるが、適当につけたための同名の老舗からクレームがついた。

 

上が話し合ってこちらが折れることになり、事前にリサーチしなかった非を問われて、店長は給与3カ月分カットとなった。

 

店長の金持ち逃げ

一人で金を預かっているため、持ち逃げは非常に多い。

 

それが起これば統括の責任であり、配下を総動員して探し出す。

 

行き先は意外にも半径20km以内の同業店が多い。

 

同業者の店長がそれをやって発見され、制裁リンチを見たエピソード。

 

闇金狩り

闇金の店長を襲撃して金を奪う事件が連続発生したことがあり、彼の会社でも起きた。

 

後年、足を洗った店長同士で飲んでいると、「あれをやったのは俺だ」との告白があった。

 

第5章 泣ける闇金融

闇金稼業をやる間に金原氏は色々悲惨な光景を見たらしい。

 

戦後のようなボロボロのアパートで電気も止められて暮らしている親子から3000円取り上げた話。

 

5歳と3歳の子を捨てて失踪した親。その子は施設に引き取ってもらった。

 

資金繰りに詰まり、「強盗でもやるしかない」と言っていて、本当にやった男。

 

事務所のあるビルから飛び降り自殺した客が降ってきた話、などなど。

 

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